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福島中通り地域の活火山・吾妻山と安達太良山の噴火リスクとは!?正しい知識を身に付けて、火山災害から身を守ろう!

県北
福島市

福島市西部にある吾妻山には浄土平や高湯温泉などの観光資源があり、多くの観光客が訪れます。福島県中部に位置する安達太良山でも、観光ロープウェイやトレッキングコース、冬にはスキーも楽しむことができます。
この2つは活火山であること、そして吾妻山は噴火警戒レベルが一時引き上げられたことはニュースなどで聞いたことはあると思います。
しかし、実際に噴火が起きたらどうなるか考えたことはありますか?遠くの山が噴火したところで自分には全く影響はないだろう、そう思っていませんか?
そこで今回は、福島市危機管理室の火山防災担当である長谷川仁さんに、噴火がおこなったらどうなるのか、噴火後に身を守るにはどうすれば良いか、そして噴火が起きる前の備えについて、詳しくお話を伺ってきました。

吾妻山と安達太良山の火山活動について知っておこう!

▲福島県広域マップ

吾妻山と安達太良山は活火山です。
活火山とは「過去1万年以内に噴火をしたことがあるか、現在も活発な噴火活動をしている火山」のこと。
吾妻山と安達太良山は仙台管区気象台が24時間体制で火山活動を監視しており、状況に応じて気象庁が噴火警戒レベルの引き上げ、引き下げを発表しています。

噴火警戒レベルの見方

レベル1…活火山であることに留意(通常の生活が可能)
レベル2…火口周辺規制(注意しながら通常の生活が可能)
レベル3…入山規制(いつ噴火が起こってもおかしくない状態)
レベル4…避難準備(もうすぐ噴火が起こるであろう状態 )※積雪時
レベル5…避難(噴火する(した)ので直ちに避難を! )※積雪時

吾妻山は火山活動が活発化中!

▲吾妻山 出典:ふくしまの旅―福島県観光情報サイト―

吾妻山は福島市西部に位置し、福島駅までの直線距離は約19km。
ここ数年、火山性地震の多発、火山性微動の発生などにより、噴火警戒レベルへの引き上げ・引き下げを繰り返しています。
2008年に噴気活動が始まってから現在に至るまで、火山活動が活発な状態は続いているのだそうです。

■吾妻山 噴火警戒レベルの変動
2014年12月レベル2 → 2016年10月レベル1→2018年9月レベル2 → 2019年4月レベル1→2019年5月レベル2 → 2019年6月レベル1
吾妻山の活動状況はこちら(気象庁)

安達太良山は通常の状態をキープ中

▲安達太良山 出典:ふくしまの旅―福島県観光情報サイト―

安達太良山は福島県中部に位置し、福島駅までの直線距離は約21km。
2019年12月現在、「火山活動に特段の変化はなく、噴火の兆候が認められない。噴火警戒レベル1を継続。」とのことで、今のところはそれほど気に留める必要はなさそうです。
安達太良山は最も新しい時代では約2400年前に大規模なマグマ噴火が起こったと考えられています。

安達太良山の活動状況はこちら(気象庁)

福島市街地まで影響がありそうな火山噴火現象は3つ!それぞれの状況と取るべき行動をまとめました

▲主な火山噴火現象

火山が噴火すると図のような現象が起こります。
その中で私たちの住む福島市街地まで影響がありそうな現象はこの3つ。緊急度の高い順に詳しくご説明します。

①融雪型火山泥流(ゆうせつがたかざんでいりゅう)
②降灰後の土石流(こうばいごのどせきりゅう)
③降灰(火山灰)(こうばい かざんばい)

①融雪型火山泥流:積雪時の噴火には最大限の注意を。ただちに避難しよう!

発生時期:積雪ありの冬季~春にかけて起きやすい
山に雪が積もっているときに噴火すると、その熱で火口周辺の雪が解かされ、大量の水が発生します。
その水が周辺の土砂や岩・樹木などを巻き込みながら高速で山を流れ下る現象で、速度は時速60kmを超える場合も。谷筋や沢沿いを一気に流下し広範囲にわたり大規模な被害を及ぼします。

取るべき行動:直ちに高台へ避難!
積雪時に噴火が起きたら、河川から離れて高台へ避難しましょう!
噴火なのに高台!?と思われる方も多いかもしれません。積雪があるときに火山が噴火すると、この「融雪型火山泥流」が発生する可能性が高いからです。
皆さんの記憶に新しい2019年10月に発生した台風19号よりも被害が大きくなることが予想されており、河川の周辺は特に危険です。

避難行動のポイント
・緊急速報メールやエリアメールの確認。
・火山情報の収集(福島市及び福島地方気象台HPなど)
・火山防災マップで被害予想地域を確認
・避難場所、避難所の確認(避難が長期化する場合は、居住地域によって指定避難所を設ける)

避難情報等の発令が間に合わない場合は・・・
・河川の近くに住んでいる方は、速やかに河川から離れ安全な場所へ避難する。
・近くの高台及び2階建て以上の建物上部などの安全な場所へ避難する。(自宅の2階以上に留まり安全確保)
・逃げ遅れがないよう地域住民で協力する。

ここで、かなり衝撃的なデータをお見せします。
吾妻山や安達太良山で、火口付近に2mの雪が積もっているときに大規模な噴火(マグマ噴火)がおきた場合の被害想定数です。想定しうる最悪の状況で、最大規模の火山噴火がおきた場合には、これだけの被害が出ることが予想されるのだそうです。

吾妻山マグマ噴火 融雪型火山泥流
被害世帯:42,535世帯
被害人口:95,035人

安達太良山マグマ噴火 融雪型火山泥流
被害世帯:14,487世帯
被害人口:33,023人

2019年12月現在で、福島市の世帯数は124,812世帯、推計人口総数は286,564人。吾妻山で積雪時にマグマ噴火がおきた場合は福島市の約3分の1の方が被害にあうという計算です。
※有史以来、融雪型火山泥流が福島市街地まで到達したことはありません。

吾妻山も安達太良山も24時間体制で監視しているとはいえ、火山噴火は突発的に発生することがあります。避難情報等の発令が間に合わない場合もあるそう。火山噴火から福島市街地までの火山泥流到達時間は数十分程度とも言われています。

私自身も、雪が積もっているときに起こる火山噴火によって、これほどまでに大きな被害が出ると予想されていることを、この取材を通して初めて知りました。
「融雪型火山泥流」に対して私たちができることは、直ちに避難!これだけです。

②降灰後の土石流:噴火後の雨にも注意!雨で土石流が発生しやすくなる危険!

発生時期:火山噴火後に雨が降ると起きやすい
火山噴火後、火山灰の堆積した地域に雨が降ると土石流が発生しやすくなります。
降り積もった火山灰には雨水がしみ込みにくく、通常は地面にしみ込むはずの雨水が大量に上滑りして山を流れ下るためです。
少ない雨でも起こり、流下スピードが速いのが特徴。数年間は土石流の発生しやすい状態が続きます。

▲吾妻山 降灰後の土石流予想マップ(2014年改訂版吾妻山火山防災マップから)

取るべき行動:福島市や福島地方気象台HPなどで情報を確認し、必要があれば避難!
火山噴火後は「降灰後の土石流」が年間を通じて発生しやすくなります。大雨や、雨が降り続くような予報が出ている場合、被害予想地域の方は避難準備や避難が必要になります。基本的には「①融雪型火山泥流」が発生した時と同じ対応です。

■積雪時に噴火が起きたときは
■避難情報等の発令が間に合わない場合は・・・

③降灰/火山灰:積雪なしの噴火でも火山灰が福島市街地まで届く可能性あり!

発生時期:火山噴火時には必ず発生する
火山噴火で噴出した固形物のうち直径2mm以下のものを火山灰といいます。
火山灰は上空の風により数kmから数十km運ばれ、広い範囲に降り積もります。火山灰は人体の健康被害、農作物の被害、交通障害、家屋倒壊などの被害を及ぼします。

下のマップで、火口から同心円状に広がる円が降灰飛散範囲の予想図です。(風向や風力によって飛散方向や飛散量は変わります。)

▲吾妻山 火山灰の飛散予想マップ(2019年度改訂版に記載予定資料から)

吾妻山噴火では、微温湯(ぬるゆ)温泉周辺で約10~5cm、福島西インター周辺で約3~5cm、福島駅周辺で約1~3cmの火山灰が積もる予想です。

▲安達太良山 火山灰の飛散予想マップ

安達太良山噴火では、土湯峠温泉郷で約30cm、道の駅土湯で約20~30cm、福島西インター付近で約5cm、福島駅駅周辺 5cm以下の火山灰が積もる予想です。

取るべき行動:外出を控え、車の運転には注意する
・外出は控える。
・やむを得ず外出する時は帽子、マスク、ゴーグル、傘などを使う。
・外から帰ったらうがいをする 。
・家の窓は開けない。換気扇もつけない方がよい。(火山灰が家に入るとテレビやパソコンなどの故障につながる)
・車を運転する場合には視界不良やスリップなどに注意する。

豆知識として、車の上に火山灰が積もったときの対処法は以下のようなものが挙げられるそうです。気になる方は調べてみてください。

・水で火山灰を洗い流す(高圧洗浄機が有効)
・ワイパーは絶対に使わない(ガラスに傷がつくため)
・エアフィルタやエンジンオイルを早めに交換する
・カバーをかける(予防)

火山灰の除去・清掃は、公道や公共の場所については市や県で行いますが、基本的に一般家庭の敷地(庭や屋根、駐車場、公道までの道など)については各自で清掃をお願いすることになるそうです。

火山災害への対応まとめ

ここまでの話を簡単にまとめるとこうなります。これらを頭の片隅におくようにして、生活するようにしましょう。

・積雪時に噴火が起きたら「融雪型火山泥流」→直ちに避難!
・火山噴火後に雨が降ったら「降灰後の土石流」→福島市や福島地方気象台HPなどで情報を確認し、必要があれば避難!
・噴火が起きたら「火山灰」→外出を控え、車の運転には注意する。

火山災害から身を守るために今すぐできること

▲火山防災マップ(吾妻山・安達太良山)

いつ起きるかわからない火山災害に備えて、今すぐにでもできることをまとめましたので、ぜひ参考にしてください。

火山防災マップ(吾妻山・安達太良山)の入手と確認

・火山防災マップを手元に置き、いつでも見られる状態にする。手元にない場合は、福島市役所 4階 危機管理室か各支所(在庫要問合せ)で入手する。
・ハザードマップで被害予想地域と自宅や職場、子どもの通う園や学校の位置などを確認。
・ハザードマップで避難方向と避難場所・避難所を確認。(福島市避難所173箇所の内、火山災害時に利用できる避難所は116箇所)

吾妻山火山防災マップ
安達太良山火山防災マップ(表)
安達太良山火山防災マップ(裏)

家族で職場・園や学校の災害時対応について話し合う

・火山災害が起きたとき、各自どのように行動するか家族で話し合っておく。
・子どもの通う園や学校での火山災害対応について確認しておく。

家庭の備蓄品・持ち出し用袋の見直し

・火山防災マップと、帽子・マスク・ゴーグルなど(火山灰対策)を追加しておくと安心。
・寒くなったら手袋やブランケットのような防寒具を家族の人数分追加するなど、季節に応じた服装で避難ができるように準備する。(避難所には毛布などの最低限なものしか用意していないため)

まとめ

地震や台風と同じく、火山活動も自然現象。いつ起こるか予測は難しいですし、火山噴火発生を防ぐことはできません。
火山災害について知り、家族で話し合い、今のうちに備えをし、「起こるかもしれない」という心構えをする。これをするとしないでは、火山災害に遭ったときの行動や心境がかなり違ってくるはずです。もし何か気になることがあれば福島市総務部危機管理室(024-525-3793)へお電話しても相談にのってもらえますので、不安な方はぜひご利用ください。

※今回の記事では福島市街地まで影響のでる可能性が高い火山噴火現象だけを取り上げています。「融雪型火山泥流」「降灰後の土石流」「火山灰」の他にも、火口に近い場所や地域では「噴石」「溶岩流」「土石流」「火砕流」「火砕サージ」といった危険性の高い火山現象が起きる可能性がありますので、ご自身で火山防災マップを確認されることをお勧めします。

 

▶吾妻山・安達太良山で火山災害が起こった時の情報

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