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ネットでは検索できない!?福島移住1年生が先輩移住者に聞くHow to 福島ぐらし(移住セミナー開催報告)

県北
福島市

2023年2月25日、福島県県北オンライン移住セミナーが開催されました。テーマは「ネットでは検索できない?!福島移住1年生が先輩移住者に聞くHow to 福島ぐらし」。
去年4月に福島県に来たばかりの移住1年生が先輩移住者に、日々の暮らしのこと、地域とのかかわり方、仕事の探し方など、ネットを検索するだけでは手に入らないリアルな話を聞きました。
(聞き手:一般社団法人tenten代表 藤本菜月)

左から先輩移住者の物江麻衣子さん、飯島麻美さん。そして移住1年生の小池美津貴さん一番右は聞き手のtenten代表の藤本。この日の中継会場となったのは2021年に福島市大町にオープンした「ゲストハウスLaUnion」(https://launion.page/)。

Iターン、Uターン、そして福島1年目
それぞれの福島ライフとは

物江麻衣子さんは、「ico.」という屋号で活動するフリーランスのイラストレーター。宮城県名取市の出身で、大学時代を山形で過ごし、卒業後は仙台のデザイン会社で勤務。2011年1月にフリーランスのイラストレーターに転身し、直後の2011年3月に東日本大震災で被災。自宅が流出したことから、京都、横浜、東京(浅草橋、豊洲、舟堀、赤羽)で避難生活を送ります。その後、東京・赤羽でアルバイトをしながらイラストレーターとして活動。2015年にご両親が自宅を再建した宮城県名取市に戻ったのちに、福島市で塾を経営する夫と出会い、2017年5月に福島に移住しました。
入籍や引っ越しで慌ただしい日々を終えた矢先の2019年、関東、東北、甲信越などに記録的大雨をもたらした台風19号で被災。マンションの1階だった自宅が浸水する被害を受けています。生活再建、自宅の建築、出産などを経て、2021年からは地域活動に参加したいという思いからtentenのイベントに参加。福島の特産品でもある桃のPRや福島県への移住に関する仕事など、イラストレーターとしても地域と関わるようになりました。
また、2度の被災経験から、防災に関するワークショップをtentenと共催するなどの活動をしています。

飯島麻美さんは福島市出身で、3歳の時にお父さんの転勤で千葉県市川市へ。小学3年生の時に南相馬市、小学4年生で福島市に戻りました。高校卒業後は、美大進学の予備校に通うため東京に引っ越して、大学卒業後は靴デザイナーとして東京で浅草に勤務。夫の海外勤務と出産を機に2019年、福島市にUターン。
当初はリモートワークで東京の仕事を続けようと考えていたそうですが、会社の事情によりリモートワークができなくなり退職。福島市で保育園と仕事探しを始めました。2022年6月から、福島市の広告代理店でパート勤務をしながら、ライターとしても活動しています。

小池美津貴さんは、4月に福島市に転入したばかり。長野県下伊那郡の生まれで、東京の大学に進学したのち、地元で歴史研究所や短期大学で図書館司書として勤務。福島県出身の夫と出会い、転職に伴って福島に引っ越してきました。
仕事を辞めて引っ越してきたこともあり、新たな仕事を探そうとするもなかなか見つからず。現在は3月までの臨時で高校の図書館司書として働いています。5月にはじめての出産を控えていますが、落ち着いたら育児をしながら仕事を探したいと考えています。

福島でも車なしで生活できる?
車を持たずにサービスを駆使したライフスタイルも

(藤本) 今回の移住セミナーでは、ネットでは検索できないような、リアルな福島の情報をお伝えしたいと思っています。ふつうの主婦の目線でお話を聞きたいということで、ゲストを選ばせていただきました。「車は必要か」、「仕事探し」、「防災対策」を軸にお話しを進めていただきたいと思っています。

まず車についてですが、私の場合はじめは車1台でした。夫は通勤に車を使っていなかったので、平日も私が使っていたのですが、福島市に来て息子がスポーツ少年団に入って活動を始めたため、土日に家族で別行動をとることが増えました。そこで、軽自動車を買って、今は2台所有しています。維持費やガソリン代がかかるので大変です。

(物江) 私の場合は、福島に来て5年、1台も車を所有せずに暮らしています。

(藤本) 地方では珍しいパターンだと思いますが、どういう風に工夫していますか。

(物江) 私の家はJR福島駅から徒歩で30分くらい、距離でいえば5kmくらいの立地です。主人が自宅で塾をしていて、私はイラストレーターなので、夫婦ともに家で仕事をしています。遠くに出勤する必要がないことに加えて、子どもの保育園は徒歩400mの歩いて行ける距離ということもあり車なしで生活できています。というのも、主人も私も車の運転が苦手で・・・。車を所有する便利さよりも、運転をせずに済む生活をしたいというのが一番にあって、そのために車を必要としない環境を整えました。

(藤本) お子さんを急遽病院に連れて行かないといけないときや、公共交通機関では行けないようなところに行く場合はどうしていますか。

(物江) 一番便利なのはタクシー。あとは電車でバスはあまり使っていません。タクシーを使って生活するというとお金がかかると思われるかもしれませんが、年間の支出や交通費を計算したところ、ガソリン代や駐車場代、メンテナンス代などを合計すると、タクシーを頻繁に使ったとしてもかかる費用は半分以下でした。すごく遠方に月に何度も行くような家庭ではタクシー代の方が高くなるかもしれませんが、私たちのライフスタイル、休日の過ごし方ではタクシーを使った方が安く済むんです。

(藤本)買い物はどうしてるんですか?

(物江) 買い物は、重いものやかさばるものを買う時はネット通販や、ネットスーパーを使っていて特に不便を感じたことはないですよ。

(飯島) 私は、東京では運転してなくてペーパードライバーだったので、福島に戻って来たばかりの頃は自転車かバスで移動していました。ただ、保育園への娘の送迎や、仕事のことを考えると、運転したいという気持ちもあって。そんな折、tenten fukushimaのサイトでペーパードライバー講習に関する記事(https://tenten-f.info/article/2110/)を読んで、行ってみることにしたんです。
全部で5回通いました。1回目は構内を回って、2回目は外に出て運転、3回目は自分の家の周辺を走ってみました。4回目は車庫入れで、5回目は狭い生活道路を走ってみました。
もともと運転したいと思っていたし、あちこち行きたいタイプなので、バスの待ち時間や雨風を気にせず移動できるのがメリットです。

(藤本) 小池さんはどうですか?

(小池) 福島に来た当初は車1台で、日中は夫が仕事で使っているため、私は車を使えず自転車生活でした。妊娠してから、つわりが辛かったことや、出産後の生活を考えるともう1台欲しいなと思って購入しました。物江さんのお話を聞くと、もっと工夫すれば車なしで生活できたかなって思ったりもします。

(物江) 便利かどうかの物差しで考えれば不便です。でも、不便を選択したからには、不便の中でどう工夫して、子どもにも負担をかけずに生活することを考えています。とはいえ、保育園の登園ひとつとっても、雨の日はベビーカーに乗せて防水カバーをかけているのですが、冬はカバーに雪がついて前が見えないとか、寒い思いをさせてしまっているかなと思ったりします。

(藤本) でも、東京の人は意外とそういう生活をしているじゃないかな。だから、福島でもそんな生活ができるということが物江さんの生活スタイルから伝わるかもしれません。福島市であればタクシーアプリも使えるようになったりしているので、いろんなサービスを活用すれば、車なしでも生活できるかなと思います。

人とのつながりが仕事にも

(藤本) では、次は「福島での仕事探しについて」皆さんにお聞きしたいと思います。小池さんは仕事探しで苦労したと聞きました。

(小池) 仕事を探すにあたって、私はまずハローワークに行って、それからFターン(移住者向けの就職情報サイト)でも探しました。前職が図書館司書で、全く同じ仕事は難しく、とはいえ、新しい仕事を新しい土地で始めるって全然イメージが湧かなかったんです。採用側とのマッチングもうまくいかず、どうすればいいのか分からないと思っているうちに時間が過ぎてしまいました。
4月に福島に来てから仕事を探し始めたので、求人は年度単位で決まることが多く、翌年度の採用が3月までに決まっていて、4月以降はあまり求人がないんだよねって言われました。

(藤本) Fターンの担当者に聞いたところ、1月2月がいちばん求人数が多いそうです。もし今、福島に来ることを検討している方がいたら、今から探し始めてもいいかもしれません。
小池さんは、その後、臨時の司書のお仕事が見つかりましたが、出産明けにもう一度仕事探しをする予定なんですよね。子育てをしながらお仕事を探した飯島さんは、どうやって探されましたか?

(飯島) 私もまずはハローワークとFターンで探しました。あとは民間のお仕事探しのサイトを見たり、気になる会社のホームページに求人がないか探しました。前職の靴のデザインという仕事は福島では難しいので、前職で後半の数年間携わっていた広告や広報に関する仕事の経験を広げてみようと思いました。
そこで福島の飲食店の情報を発信しているwebサイト見かけて、運営会社を調べてみると福島市にあったんです。わたしはカフェめぐりが好きで、お店の方や常連さんともよくお話するのですが、行きつけのカフェでその運営会社でお仕事をしている方と偶然出会いました。その方に会社の雰囲気などを聞いて、「よかったら紹介するよ」ということにもなっていました。ハローワークでも、その会社の求人がないか問い合わせていて、数週間後に求人が出たと教えてもらい、応募しました。
いまは、パート勤務に加えてフリーでライター業もしています。自分でこういう記事を書きたいと申し出て、業務外でする仕事については業務委託という形です。

(藤本) 東京では正社員でしたが、パートで働くのは理由がありますか。

(飯島) 娘がまだ3歳と小さいため、娘との時間を取りたいと思っています。あとは、ヨガが好きでヨガのインストラクター資格取得のためのレッスンを受けたいというのもあります。

(藤本) フリーのイラストレーターとして働く物江さんは、どんな感じですか。

(物江) 東京、福島、宮城から1:1:1ぐらいの割合で仕事をもらっています。私のホームページを通じて広告代理店の方から依頼されることもたまにありますが、ほとんどはこれまで住んだ地で交流があった企業や個人の方から今も継続して依頼をもらっています。

(藤本) では、1:1:1のうちの福島の1をどうやって増やしていったのでしょうか。何もつながりがない福島に来て、お仕事をもらうというのはどういう流れだったんですか。

(物江) まずはイラストを制作して、ギャラリーやカフェで展示会をします。けっこうあるんですよ、カフェの壁に飾ってもいいよというところが。それで搬入・搬出をするうちに、カフェのオーナーさんと打ち合わせを通じてコミュニケーションをとって、常連さんに紹介してもらったりします。自分がイラストレーターであることをPRすることで、飯島さんのお話みたいに人とつながりができて仕事になったりします。全然収入にならないこともありますが、まずは知ってもらうためにできることはやるという感じでお仕事を増やしていきました。

(藤本) 東京のお仕事と福島のお仕事で違いはありますか?

(物江) 私は女性向けのイラストを描いていて、自分じゃなきゃ描けないものを描きたいと思っています。たとえば地方にいると、いいモノなのに、発信の仕方が分からないという場合があります。そこで、イラストを使って発信するとなると、企画からすべてに携わることができます。東京は分業化されていて、イラストはほんの一部。地方ではいい意味で柔軟にオーダーメードの感覚で仕事ができると感じています。

替えがきかないものは持ち歩く!
先輩移住者がしている防災対策

(藤本) では防災の話に移りましょう。福島は地震が多いという印象を持っている方がいるようですが、どうですか?

(小池) 私も福島=地震が多いイメージでした。転入直前の2022年3月にも大きな地震(2022年3月16日に起きた福島県沖の地震。福島県内では震度6強の揺れを観測)が福島であったので、親や親せきにも心配をされていました。

(藤本) 2022年3月の地震、その前年の2月にも同じぐらいの地震があって、物江さんも飯島さんも、そして私も経験しています。何か対策はしていますか?

(小池) 私はまだ引っ越してきたばかりなので低い家具しかないし、ものも少ないので大丈夫かなって思っている程度です。むしろ、みなさんがどうされているのか気になります。

(飯島) 地震でペンダントライトが壊れて、揺れないタイプに替えました。食器棚が開き戸ではなくて、引き戸タイプということもあって、食器が落ちたり割れたりすることがありませんでした。家具にはホームセンターなどで売っている転倒防止用のストッパーみたいなものをつけていたのもよかったです。

(藤本) 物江さんは防災イラストレーター(https://bousai.themedia.jp/)として、防災ワークショップなど防災意識を高める活動をされていますが、家はどんな感じですか。

(物江) 家具固定にもいろいろな種類があって、私も試している段階です。どの商品がいいのかは難しいですが、家具固定はやっておかないと、本当に飛んでしまう可能性がありますから。

それ以外では、外出先でも被災することがあるということを念頭に生活することも大事です。私は3.11のときは外出先で被災しました。この経験から、普段から持ち歩きやすいサイズの防災ポーチを作っています。私の場合は、小さいライトや眼鏡、モバイルバッテリーなどを入れています。眼鏡やコンタクトって替えがきかないですよね。なので、なるべく携帯しています。

(藤本) 私も物江さんに感化されて、防災ポーチを作りました。中身は、公衆電話を使うための小銭、助けを呼ぶための小さな笛、ふだん持ち歩いている薬。あまり増やすと持ち歩くのが重いので。それだけでもちょっと安心して生活できるかな。

福島のこと、移住のこと、補助金のこと、制度のこと
分からないことはどんどん聞いて!

最後に、「福が満開、福しま暮らし情報センター」の移住相談員・新妻さんと、県北地方振興局の移住コーディネーター・佐藤さんからそれぞれ移住支援体制について紹介がありました。

(新妻) 「福が満開、福しま暮らし情報センター」はNPOふるさと回帰支援センター(東京都千代田区)に設置されている県の公式移住相談窓口です。移住相談員3名、就職相談員2名の5名体制で、全員が福島県出身者です。移住じゃなくても、福島のことを知りたいという最初の窓口にしていただければと思っています。お気軽にご相談ください。

(佐藤) 福島県は広く、7つの地域にそれぞれ移住コーディネーターがいます。福島県の現地でも私たちコーディネーターがいるので、ぜひご活用ください。詳しくは、福島県の移住ポータルサイト「ふくしまぐらし。」に載っております。こちらもご覧ください。
また、移住に関する補助金や制度についてもご案内します。県の情報はもちろん、市町村が決まっていれば、連携しておつなぎします。

(藤本) tentenでは、人と人とをつなげるのも役割だと思っています。私もはじめは人とのつながりで助かった経験があります。だから、福島に来て新しいことを始めたいという方は、tentenに来ていただければ、私たちが紹介できる方は紹介します。安心して福島に来てもらえたらと思います。

まとめ

移住に関することは、移住の先輩に聞く。とてもシンプルですが、生活者としての日々が垣間見えれば、移住した後の生活が想像しやすい気がします。特に、仕事探しやコミュニティの広げ方は不安が多いもの。地方移住で起業したり、経営したり、インフルエンサーになったり、そんな特別な人ではなく、いち生活者としてお話をしてくださった先輩移住者の姿は不安をそっと拭い去ってくれるかもしれません。

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