tentenインタビューvol.17 高橋文子さん〜小さな村で、自分らしく地域に溶け込む〜

結婚や夫の転勤を機に、新しい土地での生活をスタートさせる移住者の方は多いのではないでしょうか?
今回ご紹介するのは、地域おこし協力隊の夫と共に福島県川内村へ移住した高橋文子さん。
川内村の人口はおよそ2,200人。村には信号機が2つ、コンビニが1軒のみという地域です。福島市や郡山市とは異なる、自然豊かで人里離れた場所で、高橋さんはどのように地域に溶け込み、充実した日々を送っているのでしょうか。移住生活のきっかけから、地域との繋がり方などを聞きました!
川内村に移住するきっかけと最初の一歩
川内村に移住されたきっかけについて詳しく教えてください。
夫の仕事の関係で、結婚後は山形県に2年、南相馬市に約1年住んでいました。図書館司書の資格を持っていたので、それぞれの土地の図書館で働いていました。
川内村への移住のきっかけは、夫が大学時代の友人から、川内村で始めるクラフトジンの蒸留所設立プロジェクトに誘われたことでした。以前から夫が仕事で悩んでいる様子を見ていたこともあり、「大変なこともあるだろうけど、本当にやりたいことに挑戦する方が絶対に良い!」と思い、背中を押すことにしました。
当時、娘を妊娠中でしたが、「新しい生活を始めるなら、家族みんなで一緒にスタートしよう!」と決意し、出産後の4月に川内村へ引っ越してきました。
移住にあたって、地域に溶け込むために何か意識されたことはありますか?
私自身、特に何かを準備したというわけではありません。ただ、今振り返ると、村の皆さんが集まる会に積極的に参加したことが、地域に溶け込むための大きな一歩だったと感じています。
移住して間もない頃、夫の仕事のつながりで双葉郡の若者が集まる飲み会に誘われたんです。これまで夫の仕事関係の集まりにはあまり参加したことがなかったので、少し迷いました。ですが、夫だけではなくで私にも声をかけてくれたこと、仕事関係の人たちだけの集まりというよりは双葉郡の仲間同士というような集まりだったということもあり、今回は「川内村の一人の移住者として参加してみよう」と決心しました。
当日はとても緊張しましたが、皆さんが温かく迎え入れてくださり、本当に嬉しかったです。その経験から、できる限り地域の集まりに参加してみようと思うようになりました。
村の方々と顔を合わせるうちに、私のことを気にかけてくれる人が現れ、とても心強く感じました。特に印象的だったのは、「あやちゃん」と私の名前で呼んでくれた方がいたことです。「高橋さんの奥さん」ではなく、「高橋文子」という一人の人間として村の一員になれたような気がしました。この出来事をきっかけに、私も相手のことを「〇〇さんの奥さん」「〇〇ちゃんのママ」ではなく、その方の名前で呼ぶように心がけるようになりました。

村の一員としての活動し、子育て世帯の願いを形に
川内村での現在の生活について教えてください。
現在、川内村が運営する「未来デザイン会議」の一員として活動しています。未来デザイン会議は、村のDX推進課が中心となり、住民や村に関わる人が誰でも参加できる、村の新しい取り組みを考える会議です。
夫が蒸留所の関係で先に会議に参加していたのですが、村に図書館がないため、図書館に関する議題の際に、図書館司書の経験がある私にも声をかけてくださいました。初めて会議に参加した時、ちょうど子育て支援に関する議題もあり、以前住んでいた南相馬市が子育て支援に力を入れていたことから強い関心を持ちました。
川内村での子育て支援について調べていたこともあり、自分の意見を直接言える場があることは、本当にありがたいと感じています。実際には、子育て世代へのアンケートを実施し、村に必要な施設などについて意見を集約し、村長へプレゼンテーションする機会もいただきました。
そのアンケートでは、習い事や遊び場が少ないという課題が浮上しました。この声を受けて、今年度から英語を学びながらみんなで食事をする「子ども食堂」の活動をスタートさせました。

今後の挑戦と川内村で生活していく上で心がけたいこと
今後、川内村で挑戦したいことはありますか?
未来デザイン会議では、引き続き子育て支援について積極的に関わっていきたいです。これまでは支援を受ける側でしたが、川内村には意見を発信できる場があるので、外からの視点を大切にしながら、子育て支援の充実に向けて提案していきたいです。
また、今年から夫が携わっている蒸留所にも関わらせてもらい、瓶詰めやラベル貼り、発送作業などを担当しています。
蒸留所では「誰が、どんな想いでこのお酒を造ったのか」「誰が育てた植物を使っているのか」といった、造り手の「顔が見える」商品づくりを大切にしています。
私自身は酒造りの専門知識はありませんが、お酒を通して「人とのつながり」や「仲間作り」を広げていくことに貢献できればと思っています。
移住前は、村の皆さんがよそ者を受け入れてくれるかどうか、少し不安に感じていました。しかし、実際に暮らしてみると、川内村の皆さんは本当に温かい人ばかりです。小さな子どもがいると声をかけてくださったり、集まりの際には「赤ちゃんを抱っこしておくから、お母さんはゆっくり楽しんで」と声をかけていただいたり。本当に良くしていただいているので、これから移住してくる方がいたら、私も同じように温かく迎え入れたいと思っています。
川内村に移住してきて得られた「私も一人の人間である」という意識、「個人」としての意識を大切に、これから出会う一人ひとりを大切にしていきたいです。

【まとめ】
福島県川内村での新たな生活をスタートさせた高橋文子さん。ご自身の経験を通して、移住者が地域に溶け込むためには、積極的に地域の活動に参加し、相手の名前を呼ぶなど、小さなコミュニケーションを大切にすることが重要だと教えてくれました。
私も夫の仕事の関係で川内村に来たので、「夫についてきた」という意識がどこかでありましたが、高橋さんのお話を聞いて、「自分も一人の移住者」という意識をもつだけで行動が変わるなと思いました!
【基本情報】
naturadistill 川内村蒸留所
住所:福島県双葉郡川内村大字上川内字町分396-2
Webサイト:https://naturadistill.com/
Instagram:https://www.instagram.com/naturadistill/ (@naturadistill)